人身事故について
2025年10月31日
人身事故とは
人身事故とは、自動車やバイクなどの交通事故により、人がケガをしたり死亡したりする事故を指します。単なる物損事故と異なり、人体に被害が及んでいるため、法律上の責任が重く、刑事・民事・行政の三つの責任が問われる可能性があります。刑事責任としては過失運転致傷罪などがあり、免許停止や罰金、場合によっては懲役刑が科せられることもあります。民事責任では、治療費や休業損害、慰謝料などの賠償義務が生じます。また行政処分として違反点数が加算され、免許停止や取消しになる場合もあります。
さらに、人身事故は加害者だけでなく、被害者にとっても長期的な生活の影響を及ぼすものです。例えば、むち打ちや腰痛といった一見軽いケガでも、長引くと仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。そのため、人身事故は「事故後の適切な対応」と「継続的な治療」が非常に重要になります。多くの人は人身事故の重大さを体験するまで実感できませんが、事前に正しい知識を持っておくことで、いざという時に被害を最小限に抑えることができます。
起こしてしまった際の対応
人身事故を起こしてしまった場合、何よりも優先すべきは被害者の救護です。道路交通法でも、事故を起こした運転者には「救護義務」が定められており、被害者を放置して現場を離れると「ひき逃げ」となり、さらに重い処罰を受けることになります。まずは車を安全な場所に停車し、119番に通報して救急車を呼びます。被害者の意識や呼吸の確認を行い、必要があれば応急処置を行いましょう。その後、110番通報をして警察に事故の発生を報告することも義務です。
また、事故現場では冷静さを失いやすいため、相手方の連絡先や車両情報、事故状況をしっかり記録しておくことも大切です。スマートフォンで現場を撮影しておくと、後々の保険や裁判で有利に働きます。さらに、自身や同乗者も見た目には症状がなくても必ず医療機関を受診してください。事故直後はアドレナリンの作用で痛みを感じにくく、数日後に症状が出るケースが多いためです。早期受診と診断書の取得は、治療や補償を受ける上で不可欠です。
自身が加害者の場合
加害者となってしまった場合、被害者の救護と警察への通報を済ませた後は、加入している自動車保険会社へ速やかに連絡を行います。保険会社は事故後の対応をサポートし、被害者との示談交渉や治療費の支払いなどを代行してくれます。特に任意保険に加入している場合は、対人賠償保険によって高額な治療費や慰謝料がカバーされるため、経済的な負担を大幅に軽減できます。
一方で、自賠責保険(強制保険)は最低限の補償しかなく、死亡の場合で最高3,000万円、後遺障害で最高4,000万円程度に限られます。そのため、任意保険未加入で人身事故を起こすと、多額の賠償金を自己負担しなければならないリスクがあります。また、加害者は刑事責任や行政処分を受ける可能性もあるため、事故後は弁護士に相談し、適切な対応を取ることが望ましいです。
自身が被害者の場合
被害者となった場合、まず大切なのは自分の身体を最優先に考えることです。事故直後は症状が軽いと感じても、必ず病院で診察を受け、診断書を発行してもらいましょう。診断書は警察に提出することで「人身事故」として扱われ、治療費や慰謝料の請求が可能になります。診断書がなければ「物損事故」として処理されてしまい、補償を受けられない場合があるため注意が必要です。
また、被害者は加害者の加入している自賠責保険や任意保険を使って治療費や休業損害、慰謝料を請求できます。さらに、自身が任意保険に加入している場合は「人身傷害補償保険」を利用することで、過失割合に関わらず治療費や慰謝料を受け取ることができます。保険や補償の仕組みを正しく理解し、必要であれば専門家に相談することで、自分の権利を守ることが可能になります。
被害者側の保険・保証・治療について
被害者は加害者側の保険を利用するのが基本ですが、任意保険に加入していれば、自分の保険を併用することも可能です。特に「人身傷害補償保険」は強力で、加害者が任意保険未加入の場合でも、自分の保険から十分な補償を受けることができます。また、搭乗者傷害保険は通院や入院の有無にかかわらず定額の給付を受けられるため、治療が長期化した際の支えとなります。
治療については、病院での診断・治療を受けつつ、整骨院でリハビリを行う「併院」が可能です。交通事故によるむち打ちや腰痛は長期化しやすく、病院の薬だけでは改善が難しい場合もあるため、整骨院での施術が有効です。事故後はできるだけ早く医療機関を受診し、保険制度を活用して経済的負担を抑えながら、適切な治療を継続することが重要です。
加害者側の保険・保証・治療について
加害者の場合でも、自身がケガをしていることは珍しくありません。その際、自分の治療費は自賠責保険ではカバーされないため、任意保険の「人身傷害補償」や「搭乗者傷害保険」を利用することになります。また、加害者が弁護士特約をつけている場合は、被害者との交渉を弁護士に任せることができ、精神的な負担を軽減できます。
さらに、加害者としての責任を果たすためにも、自分の治療を軽視しないことが大切です。事故によるケガを放置すると、仕事や生活に支障をきたし、賠償義務を果たすことさえ難しくなる可能性があります。加害者も被害者同様に、事故後は速やかに医療機関を受診し、必要に応じて整骨院などでリハビリを行うべきです。
人身事故を防ぐためにできること
最後に、人身事故を未然に防ぐための取り組みについて触れておきます。最も重要なのは「安全運転の徹底」です。スピードの出しすぎや脇見運転、スマートフォンの使用などは事故のリスクを大幅に高めます。日頃から余裕を持った運転を心がけ、歩行者や自転車への注意を怠らないことが大切です。また、車の整備不良も事故につながるため、定期的な点検を行うことも予防策になります。
さらに、万が一に備えて任意保険に加入しておくことも重要です。自賠責保険だけでは十分な補償が受けられないため、任意保険で自分と他人の両方を守る備えをしておきましょう。







